2022年 京都大学理学部 修士課程受験記録

 

はじめまして、蜜蜂と申します。

 

私は(2022,10,07)現在MARCH内の大学で生物学を専攻しており、大学院を修士で外部受験を行い、京都大学理学部の生物科学専攻に合格致しました。

 周りに同じように受験を行う人がいない中、勉強計画は同じような他の方の合格体験記のブログを参考にしたので、今回このように自らもブログの形で発信することにしました。

 

外部の大学院進学を視野に入れている方、周りに同じように外進する仲間がおらず不安な方などがこちらを見つけた時に少しでも参考になる情報を載せられれば、と思います。

 

 

自己紹介、大学院進学のきっかけ

私は小さいころから生物が、特に動物の行動が好きで生物系の分野に進みましたが、数学に、特に計算にめっぽう弱く得意科目は英、国、生物とゴリゴリの文系寄りでした。そのままMARCH内の大学で生物系の専攻に入り、大学1年の頃は大学生らしく遊び呆けていました。

しかし大学2年に上がるとコロナが大流行。サークルも2年近く停止し学祭、イベントはすべて中止。遊んでばかりいた大学生は急に目の前の授業や将来について考えなければならない機会が増えるようになりました。

 

元々動物の行動系の分野に進みたいと考えていた私ですが、入った分野はマクロではなくミクロを重視する分野ばかりで、iPSやら細胞系の勉強を行っていました。

結果的にはそれはそれで専門的な研究に励めて楽しいのですが、やっていくうちにやはり動物実物の行動に目を向けていきたい、と動物行動系の研究を修士で行うことを視野に入れ始めました。大学2年の後期の頃の話なので、少し人よりも方針が固まるのが早かったと思います。

 

情報収集に錯綜した大学2,3年生

大学院進学を視野に入れた時、どうあがいても避けられない問題はやはりお金。大学まではかろうじて私学まで通わせられたけれど、大学院まで行くなら国立行け、じゃなきゃ就活しろ。と両親と約束をしました。

 ところがいざ調べてみると動物の行動について研究している分野はかなり限られており、題目の京都大学を始め、複数の有名難関国立の研究室に絞られていきました。

ネットで上記事柄を調べて研究室をピックアップした私は、片っ端からその研究室の教授のメールアドレスに連絡を入れて、直に相談をさせていただきました。

 

当時私は大学2,3年生の研究のけの字どころか大学院、修士についての知識をまるっきし持っていませんでした。そんな情報ほぼゼロのぺーぺーでも教授方は心優しく応対し、ご自身の研究分野と私が行える範囲の研究についてお話してくださりました。

教授にコンタクトをとることに躊躇われる方いらっしゃると思いますが、相手も長年大学教授として教鞭をとられているのでこちらの経験が浅いことは知ってらっしゃいます。ただ、

  • メールを送るときには〇〇様、私はどこどこの〇〇でこのような理由でお話を伺いたい、と文言をかなり慎重に書くこと(LINEのようにメッセージを送ってしまう方、割といるみたいです💦)
  • zoomなどで相談をするときは、相手の話を熱心に聞き、相手の研究に自分は興味がある、ということをアピールする

 

上記を気を付けることが大切です。教授側もいずれ指導するかもしれない学生さんに興味を持たれるのはうれしい事ですし、素直な人をより歓迎します。

 

そうして結果的に研究室の研究内容、修士についての雰囲気をある程度把握して京都大学理学部の生物科学専攻の研究室を第一志望とすることになりました。理由はこちらに所属すれば海外の動物も観察が可能になり、自由に研究をすることが出来るという印象を持ったからです。京大らしい風潮ですね。

 

勉強計画→勉強をはじめる大学3~4年生

勉強計画、教材について

一番気になるであろうどのように勉強したか、教材は何か?についてです。志望研究室は次の受験から研究体制が大きく変わり、英語はTOEIC、基礎科目(選択可。生物学1~16、物理学17.18、化学19,20、数学21、22の中で6題)と事前に提出した研究計画に関する小論文に対する面接のみ

2022年京都大学理学部生物科学専攻 一般基礎科目表紙

 

でしたので、英語は前々からTOEICをやり、基礎科目は必然的に生物を選択する必要がありました。

英語の筆記試験停止とスコアシート提出方式は増えてきていますが、例外もあり、東大の院試はTOEICでなくTOEFLのスコアが必要なことが多いので各個人HPで確認することが望ましいです。

 

そして基礎科目については、生物16問だから選び放題。。でもありません。8問ミクロ、8問マクロの生物学となっており、それぞれ覚えるだけでも参考書一冊分は必要。私はミクロの生物分野を選択するので、実質8問中の6問を完答しなければなりませんでした。

 

ミクロ生物の参考書については「Essential 細胞生物覚えるだけで良いよ」、とのことです。

Essential細胞生物学(原書第5版) | 中村桂子, 松原謙一, 榊佳之, 水島昇 |本 | 通販 | Amazon

みんな大好きEssential。細胞生物を学んでいる人は図を見たことがある方もいらっしゃるはず。ご存じの通り、めちゃくちゃ分厚い。目次から索引に至るまで全20章あるものが700ページ続きます。これを丸暗記です。びびりますね

(ちなみに、Essential には大元のThe Cellというもっと分厚い専門書がありますが、こちらまで覚えなくて良いといわれました。後述ですが、大学によりけりなので教授に直接聞くとよいです)

 

ちなみにマクロ生物の参考書としては、デイビスクレブスの行動生態学を覚えるとよい、とのことです。

デイビス・クレブス・ウェスト 行動生態学 原著第4版 | N.B.Davies, J.R.Krebs, S.A.West, 野間口 眞太郎, 山岸 哲, 巌佐 庸 |本 | 通販 | Amazon

こちらも分厚いです。どちらも覚えられれば良いけど、私は速攻で投げました。正直、細胞生物は高校で覚えた範囲の延長のようなものなので、やるなら前者をお勧めします。(ゆくゆくは覚えなければならない範囲なので今頃少しずつ見ています)

 

さて、延長とも言いますが実際のところこれを覚えていくのには相当な時間がかかりました。何故ならこの手の参考書は覚えたことに直接に関係のある問題集のようなものがないのです。章末の問題は応用ばかりで、基本的にインプットばかりでアウトプットの機会が少ない。これがかなりストレスで飽き性な私はこなすのにとても苦労しました。

 

実際、細胞生物に本格的に取り掛かっていたのは4年の4月~院試直前の8月で、院試が8月初旬だと考えると割とギリギリ。研究との兼ね合いもあり、がっつり勉強ができたのは6月以降に研究室から院試休みをいただいてからでした。

 

勉強計画を練る

いつ、どのくらい勉強するのかは逆算して計画しました。

ざっくりとした勉強計画

ひと月を短めに30日として、4月から8月の本番までの日にちを120日としたとき、6月まで、7月まで、本番までにそれぞれ一周することを目標にしました。

実際、この通りにはいかないこともあるので算出したページ+5ページ分を覚えていきました。実際各周回で意識したこととして、

  • 1週目:とにかく丁寧に本文をながめる。重要なところにマーカーをつける
  • 2週目:各文を覚える。
  • 3週目:自分で問題集を作成。各文を暗記しつつ、重要な部分を問題にする。

実際には、3週目は自分が覚えていない&試験に出そうなところを何度もチェックして暗記を進めていきました。

その際、かさばるので私はEssential細胞生物を章ごとにひきちぎり、各章にホチキス止めして手軽に持ち運べるようにしました。

読み込み、マークシートでかくして覚えつつ、問題集をつくる

 

アウトプットの機会は自分で作り出すスタンス、大事だと思います。例えば上の28番目の問題に対する答えは、括弧内の語句を使って自分で何も見ずに記述する。これを繰り返していきます。これを20章分行っていきました。

 

英語については3年生後期ぐらいにTOEICを700点取っていたので、そのスコアのまま提出しました。大体ボーダーより少し上くらいのイメージです。参考書は金のフレーズ。

TOEIC L & R TEST 出る単特急 金のフレーズ (TOEIC TEST 特急シリーズ) | TEX加藤 |本 | 通販 | Amazon

割とそのまんま出たのと、あとはリスニング力を磨くための習慣づけを参考書なりBBCラジオなりでつけていました。それでもリスニング力は低下していましたね。テストがある1か月前から勉強しましたが、私は英語が得意な方でしたので苦手意識がある方はもう少し前から勉強することをおすすめします。

 

あとは、毎日これくらいできた、と進捗報告を自分のノートで書いていました。小さな積み重ねが自己肯定感とモチベーションの維持につながったと思います。

 

過去問の入手

過去問は研究室訪問を3年の冬に行った際に親切な先輩に過去10年分の過去問をpdfで頂いたほか、研究室にある紙媒体の過去問を1枚ずつコピーする形で入手しました。過去問の全体的な傾向として、10年前から今に至るまで徐々に易しくなっている印象です。昔の過去問はessentialの本文を大前提とした考察問題がメインで、現在では参考書の本文そのままの問題が多いです。(あくまでも私の志望する研究室の話ですが)

でも過去問が解ければ院試の傾向が掴めますし、今年度の問題も何問か過去問と同じ内容のものが出ましたので必ず入手した方がよいです。

 

小論文について

大学出願は大体試験日のひと月ほど前ですが、成績証明書、TOEICスコアシートの提出とそれ以外に小論文の提出があります。A4 1枚以内です

研究計画は自分の興味分野、研究、研究手法や今後の展望といった論文っぽいことを参考文献を示しつつ書ければOKです。これについては過去の参考資料もないので受験生は手探りになってしまいがちですが、可能であれば身の回りの先輩や教授に添削をお願いするとよいです。

 

閑話 受験期の生活

6月から受験休みを頂き勉強をしていましたが、気分転換に勉強終わりに友達とご飯を食べに行ったり、カフェで勉強しに行ったりしていました。コロナが猛威を振るい始めた受験2週間前からは外に出ることもなく家で黙々と勉強を行っていました。

上述の通り私の身の回りは殆どが就職する環境なので一緒に勉強できる相手もおらず、自分だけで情報収集、計画を進めていくのは相当大変でした。周りが就活達成報告を受けて夏休みを満喫している画像を見て大学受験期を思い出しました(笑)

平日は毎日最低2時間、休日や2週間前からは7時間ほど勉強していたと思います。2週間前からはとにかく覚えきれないことに焦り死に物狂いでやっていたので気づけば時間がたっている、という感覚でした。胃痛との闘いでした。

私は娯楽を失えば生きる気力を失う&基本怠惰な人間なので、テレビはご飯の最中に適度にみる、やることが終わればゲームもするといったご褒美はふんだんにあげていました。過度な制限を設けていなかったので、多少の浮き沈みはありつつ勉強に長期間取り組むことが出来ました。

 

受験1日目 本場京都へ

そしてついに8月の試験日当日を迎えました。前日に現地入りして翌日の昼頃に京都学内に到着した私はそこで学食を食べつつ重要問題を解いてその時を待っていました。

因みにこのときの気温40℃。盆地の京都は東京と比べても激熱です。

大学に入ってすぐ右の建物が試験会場。指定された30分前に入りましたが、ざっと見て100人ほどは受験生がいました。

そして会場説明も受けて、試験開始。初日は基礎科目の筆頭試問のみ。問題をめくり不備がないことを確認し一つずつ問題を解いていきました。

生物学第一問

問題用紙は持ち帰りOKなのでこのように掲示しています。

試験時間は一時間半、すべて記述式でした。 私の感想として、

  • 完答するのに試験時間は割とギリギリだったという印象
  • やはり、全体的に過去問よりは優しく参考書そのままの内容だった。
  • 過去問では出ていない場所から出題された

偶々直前で見ていたところから出題されていた、というのがままありました。

 

受験2日目 面接

1日目をこなし、2日目に突入。提出した小論文から自分の研究計画、将来について質問があります。面接は学生一人対その分野の教授5人とやや圧迫気味な環境でした。

面接ではまず、「研究分野に関する志望動機は?」から始まり、「なぜ対象をその動物にしたのか」「その動物の生態は他にどんなことが分かっているのか」「研究分野でこの方法を提示しているが、ほかに応用方法があるのではないか」といった踏み込んだ質問をされました。

基本的に自分で調べてきたことを素直に話し、分からない所は分からない、今後の研究で活かすと答え柔軟に解答することを徹底しました。それと、あまり単純な答えにならないように意識もしました。例えば何故この研究を選んだの?に対して〇〇が好きだからです!とだけ言うのは避けた方がよい、といった具合です。

そんな感じで面接も乗り越え、受験を終了しました。解放されたあとは京都旅行を楽しみました。

 

全体を振り返って

そうして1週間後HPから無事合格報告を受けました。倍率は3倍くらいだったそうです。少し高め?両親からは正直受かると思ってなかったと言われました(笑)

正直基本的に好きなこと以外は持続しない人間なのでよく勉強を続けることが出来たな、と思います。大学受験と違い周りに比較されず自分のペースで進められたことが大きかったかもしれません。

準備は入念に行いましたがそれでもあっという間の2年半でした。大学受験以上の実力を大学4年になっても示すことが出来たのは自分でも大したものだと思うし、自信にもなりました。今思えばそういった矜持も今回の合格の一因やもしれません。

 

さて、大学に入ったけれど自分のやりたいことが違った、外部の大学院の研究に興味があって新しい環境に飛び込みたいと言う方へ。準備は早く行うに越したことはなく、積極的に情報を集めていってみてください。

実際生まれ持っての才能よりも地道な継続が一番の力なので、やることやってればちゃんと受かります。チャレンジしようとする気持ちはとても大事です。

 

親でも友達でも相談できる相手にじゃんじゃか頼ってストレス発散も適度に行って、悔いのない学生生活をお過ごしください。最後に、身の回りに聞いたほかの方の院試勉強をアバウトに載せておきます。多種多様なので下調べは入念に。

他の方の受験事情

東京大学薬学系志望のAさん…参考書はcell。でもそれだけじゃキツイ。学内のレジュメなど大学の授業内で出ているらしい。やったことは一般科目27年分、専門科目20年分を解答つきでもらう。過去問を何度も解いた方がよいが、見たことがない問題も出てきた。

 

東京大学生命環境系志望のBさん…英語はTOEFL。参考書はcell+入手した大学の生命科学の参考書。分野は細胞生物系の考察問題多め。

 

農工大学畜産系志望のCさん…英語はTOEIC。参考書は細胞生物の基礎のもの?+専門は畜産学辞書+動物福祉学教科書。

 

少し偏ってしまっているのですが、やはり研究室によって出題範囲はばらつきがあり、比較的細胞生物の参考書はcellやessentialになりやすい印象です。英語はスコア提出のところが増えてきているのでしょうか。

 

というわけでこれにて記録は終了します。閲覧いただきありがとうございました。